2008年06月20日

戦国風流武士 前田慶次郎

戦国風流武士 前田慶次郎 (文春文庫)
戦国風流武士 前田慶次郎 (文春文庫)

歴史小説を買う決め手は、最初の数行です。

最初の数行で固有名詞がドカドカ出てくると、ちょっと引いてしまいます。

そこをクリアしてさらに数行読んでみて、

・読みやすい!
・面白そう!

となれば、僕は「買い」です。

というわけで『戦国風流武士 前田慶次郎』、買い!でした。

2008年03月29日

項羽と劉邦 司馬遼太郎(著)

中国の英雄たちの小説

項羽と劉邦 (上) (新潮文庫)


■空の旅

ふわ〜っと空を飛んで。

ふわふわ。


■パノラマ

この小説を読むと、中国大陸の動乱をはるか上空から眺めているような気分になります。

見晴らしがいいんです。

誰がどこで何をしているか、よくわかるんです。


■項羽と劉邦

始皇帝の時代が終わる頃。

中国にふたりの英雄が登場します。

「武勇」の項羽。

「人望」の劉邦。


■すいません

今うっかり「人望」の劉邦と書いてしまいました。

でも劉邦の行動をピックアップしてみると、とても人望があるようには見えません。


■劉邦の魅力って

劉邦は30歳を過ぎてもいっこうに働こうとしません。

毎日仲間と酒ばかり飲んでいます。

やっと仕事についても、職場を放棄して行方をくらますありさま。

敵に追われたときは、馬車を軽くするために自分の子供を置き去りにして逃げました。

なぜこんな人物に人望が集まるんだろう、と不思議になります。

でも、あるんです、人望。


■天才たち

物語には、頭のいい人がたくさん登場します。

戦争の天才。

政略の天才。

内政の天才。

それを束ねるのが劉邦です。

劉邦自身の能力値はけっして高くないんですけどね。

でも魅力があるんです。その人間味に惹かれて、たくさんの優秀な人間が集まってきます。


■のらりくらり

広大な中国大陸の覇権をかけて、英雄たちが争います。

その激戦を、劉邦はのらりくらりと勝ち抜いていくんです。

なんか、おかしくて笑ってしまいます。

撃沈。

僕も劉邦の人間味にやられたみたいです。

項羽と劉邦 (上)
項羽と劉邦〈中〉
項羽と劉邦〈下〉

2008年03月29日

映画 大奥 浅野妙子(著)

大奥―OH!OKU (角川文庫)

仲間由紀恵、高島礼子、井川遥、木村多江、浅野ゆう子、松下由樹らが主演した映画『大奥』を小説化したものです。

大奥史上最大のスキャンダルといわれる絵島・生島事件(江島・生島事件)を題材にしています。

映画については大奥 スペシャル・エディションをどうぞ。


■高島礼子vs井川遥

物語の舞台は江戸。徳川7代将軍、家継の治世です。

大奥では二人の女性が対立していました。

天英院(高島礼子)と月光院(井川遥)です。

天英院(高島礼子)は月光院(井川遥)の勢力を追い落とすために、罠をしかけます。

天英院(高島礼子)が目をつけたのは、月光院派の実力者で大奥総取締の絵島(仲間由紀恵)でした。


■仲間由紀恵、ピンチ!

天英院(高島礼子)は、絵島(仲間由紀恵)をスキャンダルに巻き込むことで、月光院派の勢いを削ごうとします。


■極秘指令

ここで生島新五郎(西島秀俊)という美男の歌舞伎役者が登場します。

天英院(高島礼子)は生島新五郎(西島秀俊)に対し、絵島(仲間由紀恵)と密通するよう命じます。


■スキャンダル

歌舞伎役者と大奥総取締の密通。これが発覚すれば大スキャンダルです。

法外な報酬を約束された生島新五郎(西島秀俊)は、絵島(仲間由紀恵)に接近します。

絵島(仲間由紀恵)は、最初のうちは大奥総取締という立場を意識して生島新五郎(西島秀俊)への想いを押し殺していましたが、しだいに自分の気持ちに素直になっていきます。


■はあと

一方、生島新五郎(西島秀俊)のほうも、はじめは「仕事」として絵島(仲間由紀恵)に近づいたのですが、いつしか本気になり、自分の命をかけてでも天英院(高島礼子)の陰謀から彼女を守りたいと思うようになっていきます。


■並んで風に吹かれる

船の上で、生島新五郎(西島秀俊)が絵島(仲間由紀恵)に言います。以下引用。

「並んで風に吹かれる。並んで座る。同じ空気を吸う。空を渡る雲を見る。話をする。話をしない。(中略)そういうことを、あんた、男としたことがありますか」

絵島(仲間由紀恵)にそんな経験はありません。

大奥の女として、彼女はずっと城の囲いの中で生きてきました。

「この船の上にいる間は囲いを取って下さい」と生島新五郎(西島秀俊)は言います。絵島の心が波立つ、印象的なシーンです。


■はかなさ

これは仕組まれた恋です。実らない恋です。だからでしょうか、どのシーンの底にも、なんとなく儚さみたいなものが見え隠れ。

映画のシナリオがベースになっているので、全体的にさっぱりとした読み心地です。

文章よりも、シーンごとの人物の動きなどで気持ちが表現されていることが多いです。映画のように映像を思い浮かべながら読むのがオススメです。
大奥―OH!OKU (角川文庫)



■関連DVD
大奥 DVD-BOX

2007年02月14日

義経 司馬遼太郎(著)

義経〈上〉 (文春文庫) 義経〈下〉 (文春文庫)

自分の一生をどう使うのか。命をどう使うのか。

それって難しいですよね。でもどこかで決断しなくちゃならなくて。

好きなことをやるのか、向いていることをやるのか。

やりたいことをやるのか、できることをやるのか。


■義経はそそのかされた

義経の場合、人生の目的を決めるキッカケは、ひとりの男との出会いでした。

へんな言い方ですけど、義経はその男にそそのかされたといってもいいかも知れません。


■他人を踏み台にする方法

義経をそそのかした男の名は鎌田正近っていいます。

もともとは源氏武者でしたが、平治の乱で源氏が壊滅したあと、生きるために僧侶になった男です。

彼は人を利用する才覚に恵まれていました。

たとえば…


■彼が人気者になった理由

僧侶になった鎌田正近は、説法の人気を高めるためにある計画を立てました。

まず知人の女性を「毘沙門天の化身」に仕立て上げます。

その上で彼女を自分の説法に出席させました。

これで彼の説法は「毘沙門天の化身が出席するありがたいもの」ということになり、ハクがつきました。

「有名人」の持つ信頼を利用したんですね。

CMや雑誌広告で有名人が「私も愛用してます」っていうのがありますけど、あれと似てますね。


■思わぬ転落!!

こうして鎌田正近は民衆の人気者になりました。

でもある日、事件が発生し、彼は平家から追われる身となります。

当時の平家は絶対的な権力者でしたから、平家に追われるということは、世の中に身の置き場がないということでした。


■追い詰められた男の進路

「こうなったら平家を倒すしかない」と彼は考えます。

そのためには源氏の棟梁の忘れ形見である義経を利用するしかありませんでした。

かつて知人の女性を毘沙門天の化身として利用したように、今度は義経を利用したんですね。



鎌田正近は義経のもとを訪れて、たくみに焚き付けました。

みごとに焚き付けられた義経は「平家を倒す」ということを生涯の目的とするようになります。


でも、あれですよね、読んでて思ったのは…

そそのかされたにしても何にしても、

例えどんなキッカケで人生の進路を決断したとしても、それはそれでいいのかも知れないってことです。



きっかけは何であれ、義経は自分の足で人生を突っ走っていくわけですから、それはもう紛れもなく、誰のものでもない義経の人生なんだな〜って。


どんな経緯があったにしても、自分がこれと決めた道をひたむきに突き進むっていうシンプルな生き方が、この小説の中にはあります。

義経〈上〉 (文春文庫)
義経〈下〉 (文春文庫)

2007年02月03日

戦争と平和 トルストイ(著)

戦争と平和〈1〉 (新潮文庫)


■V6の岡田准一くん

V6の岡田准一くんはドラマ撮影の休憩時間に『戦争と平和』を読んでいる…

と、

先日なにかのテレビ番組で菅野美穂さんが言ってました。


■いわずと知れた

『戦争と平和』はロシアの文豪トルストイの長編小説ですね。

歴史小説というよりも時代小説に近いですが、ナポレオンやロシア皇帝など実在の人物も活躍しますし、一応、歴史小説として感想を書いてみたいと思います。


■ナポレオン戦争

小説の舞台は19世紀初頭のロシア。

ヨーロッパ諸国を制圧したナポレオンの脅威が、いよいよロシアにも迫ってくる、という時代です。

いわゆる「ナポレオン戦争」ですね。その時代のロシアの人々を描いた作品です。


■一人ひとり

歴史の教科書でおなじみの「アウステルリッツの三帝会戦」や「ナポレオンのロシア遠征」などの世界史的出来事のほかにも、

少年と少女の初恋、青年の夢と挫折などが描かれています。


■丁寧に

当時のロシア貴族社会がとても細かく丁寧に書かれてます。そこで生きる人々の様子が、本当にひとりひとり、丁寧に。


■ヨーロッパの激動

ひとつの国家というのは、こうした小さな個人の集合なんだということをすごく感じました。

個人がたくさん集まって国家になり、その国家が絡みあって、ヨーロッパの激動をつくる。さらにその激動が、歴史になっていく。


■歴史を動かしているのは誰だ?

この小説にはナポレオンが登場します。

フランス革命の寵児。英雄です。

歴史の渦のド真ん中にいた人物です。

じゃあナポレオンが歴史を動かしているのかというと、そうでもないんじゃないかと思うんです。むしろ歴史に動かされているような…


■歴史の波

人々の小さな生活。その鼓動が集まって大きな歴史の波ができる。そんな印象を受けました。

ナポレオンは波に乗るサーファーです。

サーファーには波を起こす力はありません。ただ波に乗るだけです。波の上で一番うまく踊れた人が英雄と呼ばれるんですね。


■波を起こしているのは

波を起こしているのは、たくさんの普通の人々。

初恋をしたり、お酒を飲んだり、友人とケンカしたり、夢を語り合ったりしているフツーの人々。

彼らの「フツーの人生」の集まりが、歴史のエネルギーになっていく。そういうことを実感できる小説でした。

戦争と平和〈1〉 (新潮文庫)
戦争と平和 (2) (新潮文庫)
戦争と平和 (3) (新潮文庫)
戦争と平和〈4〉 (新潮文庫)

2007年01月28日

小説 徳川秀忠 童門冬二(著)

徳川幕府の第2代将軍、徳川秀忠が主人公の小説

小説 徳川秀忠 (人物文庫)

■秀忠の目

秀忠の目を通して、関ヶ原の戦いや大坂の陣、さらに3代将軍家光への政権移譲などが描かれています。

歴史を現代のビジネス社会に例えたり、文中に箇条書きを用いるという手法は、童門冬二さんの特徴ですね。


■地味な2代目

徳川幕府の初代は家康。

3代は生まれながらの将軍、家光。

このふたりに挟まれて、2代目の秀忠はなんとなく地味なイメージがあります。

でもこの小説を読むと印象がちょっと変わります。


■遅刻の理由

秀忠は関ヶ原の戦いに遅刻しました。

これだけでも「秀忠は無能だ」といわれてしまいがちなんですが、本書は違います。

「秀忠はわざと遅刻した」という視点から、なるべくフィクションを排除した作風で、彼が有能な2代目だったことを浮き彫りにしています。

小説 徳川秀忠 (人物文庫)

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