2007年01月20日

一乗谷残照 夢野大志(著)

戦国武将・朝倉義景の小説

一乗谷残照―信長を苦しめた男、朝倉義景
一乗谷残照―信長を苦しめた男、朝倉義景


■滅びた者の言い分

織田信長に滅ぼされた戦国大名・朝倉義景の小説です。

朝倉義景と織田信長。

この二人の知名度を比べると、信長のほうがはるかに有名です。

ですから、どうしても信長の視点で歴史を見てしまうことが多くなってしまいます。

そのため朝倉義景については「時代の流れを読めずに滅びた戦国大名」という印象を抱きがちですが、それはあくまでも信長を中心に考えた見方であって、朝倉義景のほうにはまた別の言い分がある――ということがよくわかる小説です。

 
■頭のいい子

物語は朝倉義景の誕生の瞬間からはじまります。幼少期の義景は、とても聡明に描かれています。


■歯車が狂う

朝倉家の長老・朝倉宗滴が生きているうちは、朝倉家もうまく回っていました。

でも宗滴の死後、少しずつ何かがおかしくなっていきます。


■空中分解

宗滴という支柱を失ったために、朝倉家が空中分解していきます。

義景は組織の調和や人間関係を大切にし、平和を愛する心優しい男に成長し、朝倉家の当主として越前を治めます。

時代は激しく動きます。

義景はまったく新しいタイプの戦国大名・織田信長と対立することになり、一歩一歩、滅亡に近づいていきます。


■感想

幼少期の朝倉義景が聡明に描かれていることで「おや?」と面白みを感じました。

僕は信長中心の歴史に慣らされているので、朝倉義景が聡明ということに違和感を覚えたんです。

違和感といっても、いい違和感です。なるほど、そういう見方もあるのか!と。

この優秀な義景が、どうしてあのような優柔不断な当主になるのだろう、というところにまず興味がわきました。

この小説の義景は聡明です。平和主義者です。前例にとらわれず、自身の手で未来を切り開こうとします。それらすべてが原因となって、朝倉家は滅亡していきます。

一乗谷残照―信長を苦しめた男、朝倉義景