新書太閤記〈11〉
■もっとも長い太閤記
最終巻です。
太閤記にもいろいろありますが、この小説はおそらく、本屋に並んでいる作品の中でも、もっとも長い太閤記ではないでしょうか。
全11巻。
ここまで読んできて、秀吉と一緒にひとつの人生を歩んできたような感慨があります。
■上り坂で
秀吉がこの世に生を受けるところから、この小説ははじまりました。
でもその死までは描かれていません。
困難はいよいよ大きく、未来もいよいよ可能性に満ちている、という人生の上り坂で終わります。
とても後味のいい終わり方でした。
■逆境をおもしろがる
とんとん拍子に出世した印象のある秀吉ですが、その実、信長に仕えてからでも「逆境なしという年は一年もない」というほど、苦難の連続でした。
秀吉は壁にぶち当たっても腐りません。
物事がうまく進まない現状そのものを面白がって、笑います。
「逆境おもしろし」と、敢然と立ち向かえる心の余裕があります。
自分にできるだろうか、と思うんです。
逆境を面白がる心の余裕は大切だとわかっていても、実際に自分がそうなったときにどれだけ心から笑えるか。
できないかもしれません。いや、たぶんできません。でも、たぶんできない、と考えるキッカケになっただけでも、この小説を読んで良かったと思います。
たぶんできない。できないかもしれない。でも…。
と考えることがまず第一歩だとすれば、うまくすれば第二歩があるかもしれません。
そのうち何歩か進むうちに、「たぶんできない」が、もしかすると「できるかもしれない」に変わるかもしれません。
そのためにもまずは第一歩。
たぶんできない、と自分を見つめることからスタートできれば、と思うんです。
■スタートはどこでもいい
秀吉はいつでも地に足をつけて前に進んできました。
おおげさな夢を語らず、ただ目の前のやるべきことに集中して歩いてきました。
地に足をつけるというのは、まずは等身大の自分を受け入れることだと教えられた気がします。
だからスタートは、たぶんできない、でもいいんだと思います。
第一歩、第二歩と進んでいけるのであれば、スタートはどこでもいいのかもしれません。
貧農の子からスタートして天下をとった秀吉の人生がその証拠ということで、胸に刻んでおきます。
新書太閤記〈11〉