2007年01月23日

新書太閤記【9巻】 吉川英治(著)

豊臣秀吉の小説

新書太閤記〈9〉 (吉川英治歴史時代文庫)
新書太閤記〈9〉

「陽に立つ梅の香が皆の顔へそっと触れてくる」

「すでに陽は傾き、春めく天地のものみな、虹色の暮色に燃えていた」


■いい湯だな〜

吉川英治さんの文章はやさしくて厳かで、ほっとします。

こうした一文を覚えておいて、湯船につかりながら思い出すのが好きです。

温かいお湯に身体を沈めながら、その情景を描くともなく描いていると「ああ、小説を味わいつくしているな〜」と、自己満足で癒されます。
(´▽`)


■陽気な怪獣がゲラゲラ

9巻では、秀吉と柴田勝家が賤ヶ岳でぶつかります。

秀吉は天下を手に入れるために次々と手を打っていきます。

それ自体を心底楽しんでいるように見えます。

陽気な怪獣がゲラゲラと笑って火を噴きながら、邪魔者を払いのけてどんどん進んでいく。そういう印象です。

ひとときも時間を無駄にしたくない子供のように、秀吉は身軽にはしゃぎ回りながら天下への階段をのぼっていきます。


■詩とのコントラスト

秀吉が忙しければ忙しいほど、戦が壮絶であればあるほど、吉川英治さんのやさしい詩が存在感をまします。

新書太閤記〈9〉