2007年02月15日

戦雲の夢 司馬遼太郎(著)

土佐の戦国大名、長曾我部盛親の小説

新装版 戦雲の夢 (講談社文庫)

主人公の長曾我部盛親は、土佐の戦国大名です。

有名な長曾我部元親の息子ですね。


■長曾我部盛親とは

ひょうひょうとして掴みどころがないマイペースの風流児って感じでしょうか。

風雲児ではなく、風流児のほうで。

暮れるといって急いだり、雨だといって走るのは、どうやらおれの気性にはあわないようだ。暗くなればなったで、紙燭のあかりでほろほろと酒をのむ風趣が、またよい(引用)


という人です。


■力はあるけど覇気がない

酒を飲みます。

女も抱きます。

それでいて剣の腕はたち、天下をみる眼も持っています。

しかし戦国大名としての貪婪な欲望は、持ち合わせていませんでした。


■戦国大名に向いていない戦国大名

豊臣秀吉の死によって天下は混乱。

ふたたび英雄たちが激突する時代に突入!

盛親は、

(おれは、やはり人傑ではないな)
(おれは、将としての能力のない男ではないか)

と悩みながらも、一国のリーダーとして厳しい時代の変化に対処していくことになります。


■やってみなくちゃわからない

盛親はいいます。

人の世というものは、生きてみねばわからぬものだ。とやかく考えているよりも、やってみるほうが早い。私のような男が、大名として成功するか、失敗するか、息を引きとるときに答えが出る(引用)


盛親は戦国大名としての欲望に欠けていましたが、能力は持っていました。

秀吉の死で天下が二分する中、彼は「次の天下は徳川」とハッキリ見通していました。

しかし歴史が面白いのは、そんな盛親が結局西軍につき、家康と敵対してしまうところです。


■もしもあの時…

家康を敵にまわした盛親は、関ヶ原で敗北します。

盛親は思います。あのとき関ヶ原で自分がもっと積極的に行動していたら、合戦の勝敗は変わっていたかもしれない、と。

盛親にもチャンスはありました。決断して、行動していれば、関ヶ原で家康を破ることができたかも知れないのです。

しかし彼は行動に踏み切れませんでした。

決断ができなかったのです。

五十年の人生に、人は、たった一瞬だけ、身を裂くほどの思いをもって決断すべき日がある。(引用)


盛親はその一瞬を見送ってしまったんですね。

彼は決断ができなかった自分を悔やみます。

でもここで終わらないのが、盛親のすごいところです。


■チャンスを生かせなかった人はどうなる?

一瞬のチャンスを生かせた人間はいいとしても、逃してしまった人間はどうなるのか。どうするのか。

心のすみでほんの少しでも、人生について「こんなはずじゃなかった」と思うことがある方は、この小説からきっと何かを感じ取ることができるんじゃないかと思います。僕もそうなので。

新装版 戦雲の夢 (講談社文庫)


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